SCCmecデータベース

MRSAデータベース

本データベースは日本及び世界で分離された黄色ブドウ球菌(主にMRSA)に関する情報を収載したものです。

1。 下記の株のデータを収載しました。

(1)全ゲノム配列が決定された株。

(2)コアグラーゼ型別に用いる標準株及びコアグラーゼ遺伝子の塩基配列が決定された株。

(3)米国CDCのPFTタイプ標準株。

(4)SCCmecタイプ標準株。

(5)塩基配列が決定された毒素遺伝子の保有株。

2。データベースの利用法

(1) フィルター機能を使って目的の株が選べます。 それぞれの菌株の[1]名称、[2]MRSAの区別(メチシリン耐性による分類)、[3]分離国、[4]MLST、[5]コアグラーゼ型別、[6]agr型別、[7]spa type,[8]SCCmecタイプ株 [9]PVL,毒素性ショック症候群毒素遺伝子などの毒素遺伝子の保有 が記載されています。

フィルタ機能を使って、特定の項目にあう菌株を選び出す事ができます。 また、それぞれの菌株の特徴、塩基配列のEMBL/GenBank/DDBJ accession no.及び菌株を保存する施設も記載されています。 

(2) データベースに記載した情報について [1] MSSAがSCCmecを獲得したものがMRSAですので、MRSAクローンはSCCmecのタイプとそれが挿入されたMSSAの染色体のタイプとで定義されます(図1)。

 

染色体タイプの決定にはMulti-locus sequence typing(MLST)が世界的に最も良く使用されています(1)。 MLSTとは染色体上に分散している7つの遺伝子の一定部分をPCRにて増幅し、その塩基配列決定し、それを基にWebsite(http://www.mlst.net/)にアクセスして、それぞれの遺伝子のtype (allele type)を決定し、7つのallele typeの組み合わせによりST(sequence type)を決定するものです。さらに、それを比較し相同性に基づいてClonal complex(CC)に分類されますが、決定したSTがどのCCするか同じようにwebsiteで検索することができます。 
SCCmecのタイプは現在XI型まで報告されています。SCCmecタイプの決定法に関してはPCRによるSCCmecの同定法をご覧ください。

[2] コアグラーゼ型別、 agr型別、spa typingは簡便に実施できるタイピング法として、利用されています。 
■ コアグラーゼ型別 
コアグラーゼは血清の凝固を促進するタンパクで黄色ブドウ球菌同定の指標の一つとして使用されています。コアグラーゼに血清型の違いがあることが見いだされ、血清型特異的抗体も作成され販売されています。市販の血清型特異抗体を用いて凝固を阻害する血清型を判定してコアグラーゼ型を決定するのが本来の血清型別です。 コアグラーゼ型には10のタイプが報告されており、血清型別の基準として使用された株は標準株としてNITEに保存されています。 
コアグラーゼの解析はすすみ、10の血清型のコアグラーゼ遺伝子の全塩基配列が決定されました(2)。また。その塩基配列を基礎に簡便なコアグラーゼ型の決定法も開発されています(3)。 
■ spa typing
Protein Aは、免疫グロブリンと結合するタンパクで黄色ブドウ球菌表層に存在しています。この分子は、S領域(Signal sequence)、IgG結合領域、SSR(short sequence repeat), attachment領域から構成されているという特徴的な構造を示します(図2)。IgG結合領域は171bpから174bpのユニットから構成され、そのユニットは通常A、B、C、D、Eの5つの単位からなっていますが、その数や構成が異なるものもあります。SSRは24塩基の塩基配列が繰り返して見られる領域ですが、繰り返し配列の数は1-から23と菌株により違いがみられ、また24塩基の配列にも菌株による違いがみられます。spa typingとはSSR領域をPCRにて増幅し、その塩基配列を決定して、リピートの数及びその中の塩基配列の違いにより型別する方法です(4)。 
agr 型別 
accessory gene regulator (agr)は黄色ブドウ球菌の各種病原因子の発現に関与する制御遺伝子群です。agrA(response regulator), agrC (signal receptor), agrD (peptide pheromone), agrBの4つの遺伝子が、RNAII及びRNAIIIの発現を調節する事により、各種病原遺伝子の発現を制御しています。このうちagrC,agrD, agrBの塩基配列に違いが見られる事から、これらの遺伝子上に特異的なprimerを作成し、PCRで型別する方法が開発されています(5,6)。

[3] 毒素遺伝子について 
黄色ブドウ球菌の産生する毒素の多くは外来性に獲得されたもので、多くの場合、毒素遺伝子はゲノムアイランドの上にコードされています。 
海外の市中獲得型MRSAの多くがもつPanton Valentine Leukocidin(白血球溶解毒素)の遺伝子(lukS-PV, lukF-PV)はファージ上にコードされています。 
とびひや表皮剥奪性皮膚炎の原因となるExfoliative toxin(表皮剥奪性毒素)の遺伝子(et)はファージ上やプラスミド上にコードされています。 
毒素性ショック症候群を引き起こす主要な毒素である毒素性ショック症候群毒素(tsst-1)の遺伝子(tst)はゲノムアイランド上にコードされています。 
食中毒の原因毒素であるエンテロトキシンには種々のものがありますが、すべてゲノムアイランド上にコードされています。 
これらのゲノムアイランドの違いをPCR等で調べて、黄色ブドウ球菌株の違いを見いだす事も行われています。


1.  Enright, M.C., et al., Multilocus sequence typing for characterization of methicillin-resistant and methicillin-susceptible clones of Staphylococcus aureus. J Clin Microbiol, 2000. 38(3): p. 1008-1015. 
2. Watanabe, S., et al., Genetic diversity of staphylocoagulase genes (coa): insight into the evolution of variable chromosomal virulence factors in Staphylococcus aureus. PLoS One, 2009. 4(5): p. e5714.
3. Sakai, F., et al., Multiplex PCRs for assignment of Staphylocoagulase types and subtypes of type VI Staphylocoagulase. J Microbiol Methods, 2008. 75(2): p. 312-7. 
4. Shopsin, B., et al., Evaluation of protein A gene polymorphic region DNA sequencing for typing of Staphylococcus aureus strains. J Clin Microbiol, 1999. 37(11): p. 3556-63. 
5. Jarraud, S., et al., Relationships between Staphylococcus aureus genetic background, virulence factors, agr groups (alleles), and human disease. Infect Immun, 2002. 70(2): p. 631-41.
6. Dufour, P., et al., High genetic variability of the agr locus in Staphylococcus species. J Bacteriol, 2002. 184(4): p. 1180-6.

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